【感想】殺人出産/村田沙耶香

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「消滅世界」を読んで、村田沙耶香という作家を知り、この著者が生み出す世界観のファンになってしまいました。

これが2作目です

本作、殺人出産は『生』と『性』について考えさせられる作品でした。

合わせて読みたい

日本の未来を予言と話題騒然の衝撃作! 消滅世界/村田沙耶香

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殺人出産のあらすじ

「殺人出産制度」が認められた世界が舞台となっています。

「殺人出産制度」とは『10人産んだら一人殺していい』というシステムで、

この制度が導入されてから、殺人の意味が大きく変わった。

それを行う人は「産み人」として周囲から崇められる存在になっている。

しかし、「産み人」としての正しい手続きをとらずに、殺人を犯してしまう人もなかにはいる。

そんな彼らには最も重い刑罰が下される。

一生牢獄の中で、命を産み続けることを強いられる「産刑」。「死刑」という非合理的で感情的なものは遠い過去のものとなっている。

育子の職場で、またひとり「産み人」となった人が賞賛を浴びていた。

素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が人には言えないある秘密を抱えているからだった…

この世界は幸か?不幸か?

ねぇ、知ってる?『産み人』システムが導入された国は、自殺が物凄く減るんだってー

死の可能性がそばにあることが、生きていることの素晴らしさを強く実感させてくれる。

この世界では、自ら死を選ぶ人は少なくなっている。いつ殺されるかわからない状況で、今生きていることがすごく尊いものだからである。

自殺をして今の苦しみから解放されたいという考え方は、被害者的発想であり、加害者になればその苦しみから解放され、閉ざされていたと感じていた世界にも光が見えてくる

この世界では、『産み人』になれば、殺人を犯しても、罪に問われるどころか、崇められるのだから。

「殺人」という手段があることが、人々の心の大きな支えになっている。

突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよ。より合理的になっただけです。

そう、合理的か不合理的か。

その違いだけであって、世界はいつだって残酷。それは変わらない。

「死刑」という不合理的なものから、「産み人」という合理的なものになった。

「育子ちゃんは『産み人』ってどう思う?

小学校5年生の従妹であるミサキが不意に言った。

「えらいなぁって思うよ。命懸けで産んでるわけだし。そういう人のおかげで今、人口は持ち越してるわけだし。」

こう答えるとミサキには教科書みたいとつまらない顔をされてしまった。

死に人の犠牲を無駄にしないように、今よりもっとたくさん産み人がいる素晴らしい世界にするんだ。

この世界しか知らないミサキはまっすぐにこの世界だけを見ている。

殺人が悪とされていた世界のこと、

産み人も殺人出産制度というものも存在しなかった世界のことは何も知らない。

しかし、世界は常に変化していくものでありかつての常識も、世界の変化に伴って「当たり前のもの」ではなくなっていく。

どちらかの世界が正しく、一方が間違っているということではないのだ。

本書はこの他に、トリプル・清潔な結婚・余命の短編3作も併録されています。

「トリプル」は、カップルではなく三人で付き合うという恋人の在り方が爆発的に広まって、それが当たり前になっている世界の話です。

男性二人と女性一人、女性二人と男性一人、女性三人。このように色々な恋人の在り方がそこには存在する。

「2人で付き合う」ということ、恋人の在り方について疑問符を投げかけています。

カップルが当たり前だった大人や親世代にとって「トリプル」は異質なものであり「異常」なものです。

しかし、「トリプル」しか知らない10代の若者にとっては「カップル」が異質なもの。

どちらかが「異常」でどちらが「正常」なのか?ーー。

まとめ

本作「殺人出産」は、殺人出産制度が認められ、殺人が絶対的な「悪」ではなくなった世界の話です。

設定が面白く他の短編も読み応えのあるものでした。

村田さんの著書は、「性」について問いかける作品が多く見受けられる。

そこには村田さん自身が抱えている「性」に対する問題やトラブルが見え隠れしているような気がします。

「殺人出産」/村田沙耶香(単行本)

「殺人出産」/村田沙耶香(文庫)

「消滅世界」/村田沙耶香

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