著:中村文則 「何もかも憂鬱な夜に」~感想~

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中村文則さんの何もかも憂鬱な夜にを読んだので紹介します。

どんな本か?

中村文則さんは、有名な芥川賞作家さんです。

2002年「銃」で新潮新人賞を受賞し、デビュー。2005年、「土の中の子供」で芥川賞を受賞。この他にも「悪意の手記」「最後の命」「世界の果て」など数々の有名な著書がある。

あらすじ

施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、「山井」はまだまだ語らない何かを隠しているーー。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。

感想

タイトルや内容紹介を見て、暗い話なんじゃないかと想像すると思います。

実際に暗く、読んでいて憂鬱になることもありますが、読後は不思議なさわやかさを感じた作品でした。

自分の中には生や死に対する根源的な悩みや暗い方向への思考が強いからなのか分かりませんが、「僕」や「真下」の心情にすごく共感できた。

中村文則さんの本は初めて読みましたが、読みやすく表現の仕方が好きな作家さんだと感じました。

本書は「命」が大きなテーマになっていて死刑制度や犯罪。生と死について考えさせられる作品です。

本の最後には、又吉直樹さんの解説が添えられています。

この小説は闇からも光からも「命」とう根源的なテーマに繋がっていて、その陰影によって「命」が立体的に浮かび上がってくる。命は尊いと誰もが理屈では理解しているのだが語ると忽ち(たちまち)陳腐に聞こえることがある。この小説が、そこに陥らないのは闇と光の両面から対象に肉薄しているからだろう。

印象に残った言葉

俺が被害者側の人間とか遺族だったら、強姦も、飲酒運転の轢き逃げの殺人も死刑にしてもらいたいが、でも、それでもどういう状況なら死刑で、どこまでの状況なら死刑じゃないのか…死刑というのは、確実なものにならない。ここからが死刑、ここからは死刑じゃない、という線が曖昧で、時と場合によって、変わってしまう、無理やりどこかで線を引いたとしても、その引いた線が、絶対に正しいものになることはない。そういう確実じゃないものを、人間の手で、やらなければならないんだ。(61ページより)

これは、凄まじい奇跡だ。アメーバとお前を繋ぐ何億年の線、その間には、無数の生き物と人間がいる。どこかでその線が途切れていたら、何かでその連続が切れていたら、今のお前はいない。(155ページより)

人が生きなければならない理由について生命の連続性に求めるのはとても説得力があると感じた。

「お前は、まだ何も知らない。この世界に、どれだけ素晴らしいものがあるのかを。(157ページより)

ぼくたちは、自分の今目の前に見えている世界が全てだと思ってしまう。

しかし、自分が知らないだけで、素晴らしいものは沢山ある。

綺麗な景色を見たり、芸術や文学に触れることで、世界にはこんな素晴らしいものがあったのかと気付くことができるということを教えられた。

また、真下がこの言葉に出会えていれば。芸術や文学に触れる機会があれば、結果は違ったものになっていたのだろうかとも感じた。


🔴まとめ

中村文則さんの「何もかも憂鬱な夜に」を紹介しました。

重いテーマなので、人を選ぶ作品ですし、気分が沈んでいる時に読むのは止めたほうが良さそうですね。

中村文則さんの本を読んだことがない方でも、この記事を読んで気になったのなら読んでみると、著書の作品の魅力に触れられると思います。